旅日記

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2日目 8月15日(水)曇り→ど晴れ
銚子→鴨川


■出発

AM4:30起床、自然と目がさめる。
曇っていて雨が降ってきそうな雰囲気。

晴れ男の私は何故か「旅の最中は晴れる」と確信を持っていて、カッパを持ってきていない。
ちょっと不安ながらも海岸のトイレに行き顔と歯を磨く。
相変わらず寝起きがいいなー。

本日の目標は、
1.勝浦まで行き、海中公園で観光。
2.キャンプ場を見つける。
3.必ず風呂に入る。
以上である。

テントをたたみ9ちゃんに乗せて、いざ出発!
AM5:15。

とりあえず千葉の右端まで来たので、後のルートは簡単。絶えず海を左手に見て距離を稼げばいい。
昨日は山道だったが、今日は待望の海沿いである。いい景色がみられるといいなー。

と、思っていたらいきなり山である。つまりは坂。
「起きがけにこれかよ!」と三村風の突込みを入れようが誰も聞いてはいない。
相変わらず慣れない。放送禁止のかなり汚い言葉を1コギ1コギに発しながらなんとか坂道をエッチラ突破してゆく。

県道245から国道126とへて県道30へ。
このころになると平らな広い道となる。今日はとにかく距離を稼がなくてはいけないのでラキー!
6:00、コンビニでおにぎりセット買って道端でくらふ。


■九十九里ビーチライン

県道30号がいわゆる「九十九里ビーチライン」というやつで、浜に沿ってずーっと続く。
ただところによりさらに浜側、ちょうど砂浜と駐車場の間に一本の自転車用舗装道路があった。
波をすぐ左手に見ながらの疾走は気持ちがいい。

ただただどこまでも続くのは砂浜と同様サーファー達!
いずれやってみたいなーとは思っていたので、横切りながらもある程度は楽しんで見ていたのだがあまりの数の多さにうんざりしてきて「こんなにみんながやってるなら俺はやーんない」とすっかりへそが曲がる。
どの道、車が無いので無理なのだが……。

自転車用通路は非常に気持ちいのだが突然予告も無く道がなくなってしまうのが欠点。
ビーチラインまで戻るのに、わざわざ来た道をもどって道を探したり、砂浜を押していったり。
自転車ってのはホント砂浜に弱い!
もうだまされないぞ。

今日は曇っているのでスピードを出すほどに風を感じることができて気持ちいいのだが、ずっと風にさらされているのとシャツの汗が乾かないのでちょっと寒さを感じる。
コンビニであまーいホットコーヒーを買って体を温める。
「あったけー」
また力がみなぎってくる。いくぞー!

とにかくビーチライン平坦で走りやすかった。おかげで予定の時間をずっと上回っている。
岬町に入る手前でビーチラインは終わり国道128号「外房黒潮ライン」へ入る。サンキュー30号。


■黒潮ビーチライン

さー、ペースを崩さずガンガン行くぞーとおもっていたら国道に入ったとたん再び坂道地獄!さらにトンネル!!
坂道は辛いがトンネルは恐い!
ちょっとでも路肩からそれると後ろから轢かれそうになる。ヒエー。
絶対に後ろはふりかえれません。

国道は車の渋滞がひどかった。
ぜんっぜん動かないんだもの。
御宿でずーっとくだりの道で300台ぐらい抜いた。
いやいや、オーバーじゃなく!200台ぐらいは一度もペダルをこがずに。
あんときは気持ちよかったなー。

だがよかったのはその時ぐらいで、あとはブルーなできごとばかり。
午後になって突然ぎらぎらと晴れ始めて、またもや炎天下の下で坂道、トンネル、あるいは上り坂のトンネル!

狭い二車線の山道で、路肩の小さな反射鏡に激突して車がびゅんびゅんとおっている真横で思いっきりこけたり、荷台の調子がおかしくなって乗っけていた銀マットが後輪に引っぱり込まれてこけそうになるは銀マットには大きな穴があくわ……。
要するに自分が悪いんだけど。

それよっか汚い!自分が汚いのだ!!
昨日も一応水とタオルで体を拭いたのだが、なんせ汗を相当かいているので体がべとついてしまっている。こうなると又ずれなども痛くなってきた……。
早く風呂に入りたいよー。


■鴨川の涙−1

なんだかんだで前半の貯金が効いて、なんと1時過ぎには目標の勝浦の海中公園についてしまった。
余裕で「じゃー海中公園に行ってー、テントはってー、風呂入ってー」と予定を立てたのだが……、はっきり言ってつまらなかった!

ここに限らずナントカ海浜公園とかナントカ臨海公園とかに行っても、それまでに通ってきた自然の美しさ、海の雄大さを見ているとすごくせせこましいものにしか感じないのだ。
みんななんでこんなところに建物立てて集まってるんだろ。

これからどうしたもんかと地図を見ると、10数キロ先に鴨川シーワールドがあるではないか!
実はここが明日のメインとするつもりの場所だったのだが「行っちゃおっと」とまたもや予定変更。

シーワールドのそばに「鴨川トロン保健センター」なる健康ランド的温泉があるので、今日はここに泊まろうと決心。
木陰で氷小豆食べて出発!

今日の目標の地まで来たのに、もう一度出発できたのはもちろん温泉に浸かりたかったからだろう。
ゆっくりしたかったし、とにかく体を洗いたかったのだ。

人工的な坂道をエッチラオッチラ乗り越えて鴨川に着く。学生時代サークルの合宿でここに来たなー。なにも覚えていないが。で、保健センターはまさにすぐ向かいにあった。

9ちゃんを停めて荷物を下ろすのももどかしく駆込む。
「お一人様1800円です」
思えばここできちんと泊まりについて聞いておけばよかったのだが……。
なんせ一刻も早く風呂に入りたかったのと「本日開き部屋あり」などという看板見ていたので安心して詳しいことを確かめないまま入浴。

体を、髪を洗う快感、温泉の気持よさたるや!
超音波湯、打たせ湯、そして露天のヒノキ風呂!
「頑張ってよかったー」
魂が上ずり、体の力が抜けてゆくのがわかる。
体重計に乗ったとき意外はまさに極楽であった。

緊張感の無い顔でたっぷりお湯につかった後、一度着替えて考える。
今日はここで泊まりにして、これからシーワールド見に行こう!
そして今夜は温泉三昧じゃ。なーははは。

気持よすぎて力が入らない足を引きずり、いつも以上にトロンとたれた目でフロントに行く。
ところが……。
「すいません、今日泊まりにしたいんですけど、いくらになりますか?」
「申し訳ありませんが、お一人様はご宿泊は出来ないんです」
「へ?」

すでに時間は午後の4時を回っている。
突然本日の寝床、極楽から追い出されることとなった。

想像してみて欲しい。
温泉に浸かり身も心もとろけきったあと、もう一度自転車こぐことになるのだ。しかも当ても無く。
わたしはお湯の中に溶けて消えたやる気を何とかかき集めて荷物を纏めた。

しかし……地図を見ても近くにキャンプ場も無い。あることはあるが山奥そうで、この地図では行き方がわからない。
とりあえず自転車をこぎだすと、荷台が横にずれてしまった。
もう一度荷物下ろしてレンチをだす気になれなかったのでそのままゆっくり走る。もちろんバランスわるし。
「どーしよ。」
浜沿いは最近は危ないって聞いてるし……。


■鴨川の涙−2

最高にブルーになりながらバランスわるい9ちゃんをこいでいると、漁業組合の港のようなところに出た。
その辺を「場所」をさがして流していると、船だなんだを大量に置いている場所があった。
「あ、ここなんかどうかな」
と思いなかに入っていくと人の声がする。
60〜70ぐらいのおばちゃん二人組だ。

かけよって
「すみません!旅をしているものなのですが、今日の寝床が見つからなくて困ってます。
よろしければこの当りにテントを張らせていただけないでしょうか」
だめもとでたのんでみる。
そしたらおばちゃんらが元気元気!
「あーそしたらーコン小屋に泊まれー」
といって今出てきた小屋に戻り掃除を始めてくれた。

おばちゃん達は海女さんらしく、この小屋が事務所みたいなものでちょうど帰るところだったようだ。
「冷蔵庫ここにあって飲み物もはいってるから飲めー」
「洗濯機あるから洗濯していー」
「ござ敷いておくでゆっくりしていってー」

もうありがたくてありがたくて胸がいっぱいになった。
「ありがとうございます!なんのお礼も出来ないのですが」
「礼なんてイイ!」
「そうだーうちも孫がいるけ、どこで人に助けてもらうかわからねーでな」

とりあえずお礼の手紙を送ろうと、住所とお名前だけ聞いてわかれた。
「蚊がでる」とはきいていたんだけどあまりにひどいのと、蜂がでたので小屋の中にテントを張ることにした。

なんかシーワールドもどうでもよくなったので9ちゃんのメンテしてご飯食べて寝ることにする。


■やさしさ

今、テントの中でこの日記を書いている。
周りがカサカサするので懐中電灯を向けてみると、なんとゴキブリ……。
虫もときどきテントにぶつかってくる。
木製のきたない小屋。
でもぜんぜん気にならない。

周りに明かりは無く、人もいない。
孤独でありはっきり言って怖い。

でも心が満たされた満足感がある。

親切心ってなんだろう。
今の世の中って人がいいってことはもはや罪とも言える。
だまされる側の無邪気な良心とも言えるだろう。
俺はノー天気なお人よしではいたくないと思っていた。

けどそれがなんだっていうんだろう。
おばちゃんたちは東京の位置も知らなかった。けど大切なものを教わった。
俺を救ってくれた親切はけっして自己満足などではなかった。

ここまで無防備にはなれないだろうけど、なさけは人のためならず。
かならずお礼をほかの誰かにしよう。

22:18
ちょっと怖いテントにて。

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