旅日記02

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4日目 2004年8月10日(火) 戸田→元住吉
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■17号

5:00
久しぶりにケータイの目覚ましが鳴るまで寝ていた。
外はすでに明るくなっている。

今日は家に帰るのが目標だ。
今夜には家で録画したJ2の試合でも見ながらまったりできるだろう。
9ちゃんに荷物を積む。普通に乗っていてもちょっとガタガタするようになってきた。
とにかく家に着くまではもってくれ!

出発前に海を見る。相変わらず透明度が高い。
魚に別れを告げ、大瀬に向かって出発!
17号を行く。

大瀬は伊豆半島の1番左上の隅である。
大瀬崎というのがあるのでまずはここをたずねよう。
いきなり坂道だ。足には疲労が溜まっている。日々疲れは溜まるようで、今日の出だしが1番大変だった。
それでも体を休めた後だと、回復している。
昨日の最後に比べるとずっとマシだ。

夕映えの丘があった。
昨日夕日を見にここまで来たかったのだが……。
ここはいずれ絶対に来よう!もちろんバイクで。

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「←大瀬崎」という看板を見つける。
ここに行くにも17号を一時外れるのか……。昨日の波勝崎での出来事があったためちょっと不安。
案の定凄い下りである。
しかし人が多い!海水浴やキャンプができるからかな?
朝の内から早くも車がやってくる。

下った先、いろいろ探して見たが、大瀬崎はなかった……。
どうやら砂浜を越えていかなくてはならないらしい。
「じゃあいいや」と引き返すが、やはり戻るための上り坂。
車や人もガンガンこの狭い道をやってくるし、大変だった。

下りの「前借り」はやだなぁ。
上り下りを貯金と浪費に例えると面白い。
なかなかたまらないが、こつこつ続けているといつのまにか結構貯まっている。
でも全開で使ってしまえばあっという間。
借金は気持ちよくないし返済もきつい……。

ようやく17号に戻り、ここからは東に進むことになる。
いろいろなルートを考えたが、とりあえず三津まで進み熱海街道というので帰ろう。
ここから三津までのルートは狭かったがたいした坂道は無く、絶えずすぐそこに海が見えて気持ちが良かった。

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時間帯が早かったから車が少なくて助かったのかもしれない。

ただ残念なことにこのルートで富士山がはっきり見れなかった。
天気はいいのになぁ。

三津についてやはりコンビニ弁当を食べる。
相変わらず飯に関しては失敗してるなぁ。
海を見てご飯食べるのはこれで最後かな?

今日も暑い!
上半身は裸で走っているのだが、背中に当たる日差しが刺すように感じられてきた。
今日も絶えず汗だくである。こんなに汗かかってチェーンとか錆びないのかなぁ?
とにかく水分だけは欠かさず取るようにする。

熱海街道に入った。
箱根よりはマシだろうとおもったのだが、普通に山であった。
お昼に近くなり太陽の位置が真上に来ると、全く休める日陰が無くなった。
チャリは左側通行なのだが、この街道は右手に山の頂上があるらしく、こちら側には日陰はない。

背中を刺す太陽光線の痛みがひどくなってきた。
全体を何本もの針で突っつかれているような痛みだ。
日焼けは諦め、わざわざバッグの中から白いTシャツを出して着てしまった。

昨日から「いっそ9ちゃん壊れてしまわないかな」などの考えもよぎった。
そうすれば自分の中の人に責められることなくこの旅を中止できる……。
左手にはあちこち傷が出来ている。
車を避けるため路肩の端を走って、そのときに草などで切ってしまったのだ。


■セミの死骸

ドライブインみたいな店があった。近づくが日陰はほぼなし。
自販の前でぐったりしているとおばちゃんが現れ、
「ここちょっとこっち行ってごらん。木陰があってすごく涼しいから」と教えてくれた。
よっぽど疲れて見えたのだろうか。
「ありがとうございます!」
左折して20メートルほど行くと、確かに木陰があった。
目の前にはひろーいトオモロコシ畑と山が広がっている。
風も気持ちがいい!ちょっと本腰を入れて休もうと決めた。

飲み物を買いに自販に戻ろうとすると、足元にセミが死んでいた。
いつも見る死骸はあお向けだが、こいつはまだうつ伏せで綺麗であった。
ちょっと切ない気持ちになるがまずは飲み物を買おう。

ところでこの旅の最中、何十回とドリンクを買った。
そのなかでダ○ドーの自販のみ、いまだに「一本当たり」制度が残っていたため、相当売上には貢献したはずだ。
だが一度も当たらなかった。MIUとか飽きるほど飲んだのに!
ここにもダイ○ーの自販があったので買ってみた……がやっぱり外れ……。

まぁどうせ俺なんかくじ運の無い星の下に生まれたよ。
いままで懸賞とかビンゴとかtotoとかまともに当たったことないしさ……。
運を頼らずに生きてやる!などしがないことを考えながら日陰に戻る。

と、セミの死骸がなくなっていた。
風で吹き飛ばされたかな、と思いしばらく休んでいると……。
ふと目に入った。2mほど先にさっきの死骸が前進している!?
いや、生きていたのだ!よちよちと止まっては動き、ちょっと進んではピタっととまる。
本気で涙が出そうになった。別にこいつは頑張っている訳ではないだろう。
ただ生きる本能に必死に沿って動いているだけだ。
でも自分の命を必死に生きようとしている姿には心を打たれるものがあった。

そしてさらに信じられない光景となった。
なんとそのセミが飛ぼうとしたのだ。
「ジジッ!ジジッ!」
だが高くは飛べずすぐに落っこちてしまう。
だが、何度目かのチャレンジで20センチほどの草の中ごろまで飛んでとまることができた。

多分こいつの命は長くないだろう。
地面の中で何年も過ごして、やっと外の世界で思い切り歌い、そして多分最期が近いんだろう。
でも生にこだわるその姿は、僕に大きな暗示をくれた。

この旅の最中、辛い時には「なんでこんなことしてるんだろう」となんども思った。
で、やっと気づいた。僕は自分に期待を持ち続けていたいんだと。

人間は生きていく上で少しずついろんな経験を積み、知識や生きる知恵を身に付けていく。
それはそれで大事なことである。
でもそれはある意味、人生の枠を決めてしまうようなものだ。
僕も30近くなり、無知ゆえの無邪気さで将来を見ることは無くなった(多分)。
もう待ちきれずに嵐のなかで帆を張るような真似はできない。

かといって知識をつけ、地上にでたら死が近いことを知ってニヒルに死を待つようなセミにはなりたくは無い。
だったらこのセミのように本能だけで生きるほうがいい。
だけど自分は色々知ってしまった。じゃぁどうするか。

それは自分みたいなもんでもやってみたら意外とできるということも経験していこうとすれば良いんじゃないか。
できるか分からないことでも、意外と頑張れちゃう自分をもっと知っていこう。
そうすればまた無知ゆえの無邪気さとは違う希望の目で自分を信じられる。
同じように「若くいられる」という感じか。
その為に、苦しいことにチャレンジしてみては小さな成功体験を積みたがっているんじゃないだろうか。

ちょっとした傷ぐらいなら必ず乗り越えられると僕は堂々と言いたいし、僕の周りの大切な人にはそう思っていてほしい。
それを自分でいつも確信するために必要な山越えなんじゃないだろうか。
どうしようもないことが沢山あるけど、意外と頑張れば何とかなることも沢山ある。
それを僕は確信していたいからこんなことをしているのかもしれない。

自分が甘かろうが正しくなかろうがそんなものはすでにどうでもよくなっている。
少なくとも人生を楽しく生きる1つの方法ではあると思う。
自分はこう考えて生きているのが楽しいし、そう生きていることが僕を支えてくれている周りの大事な人にお返しできる数少ないことだと思うから「これでいいのだ」!

だから私ゃハードマゾでは無い!と思うんですが……。
話はそれたが、セミの姿をみて自転車をこいでいる間中こんなことを考えていた。

まばゆい光と熱の洪水の中坂道は続いたが、この坂にもやっぱりあった。
衝撃の下り!
二車線で曲がりくねった道ゆえ無茶は出来ないが、コーナリングなどもコツをつかんできた。
これ、対向車が無いところだったら相当面白いなぁ。
バイクのレースの楽しさがちょっと分かった。

事故らないように最大限気をつけても最高の時速61kmを表示。
もちろん一切漕がずに。
一気に熱海に着いた。


■ラストスパート

熱海は以前温泉に来たことがあったが、夏はこんなに海水浴客で溢れているんだなぁ。
熱海から小田原まで、これまた坂道が多い。
ギラギラの太陽に照らされた海を見るのがちょっと辛くなってきた。

真鶴で海沿いの道をチャリでは行けないようで、左折させられる。
と、またひどい坂。
「なんだよこれ!」
ただ裏道なので車は少ない。

気が付くとまたもや海は相当下にある。
だがやっと小田原に着いた!
なぜか気が付くとバイパスに入ってしまい、相当怖い思いをしながら路肩を手繰り市街へたどり着く。

13:10
既に90kmも山を走っていた!

ここでうなぎを食べた。
タイミングよく友達からメールが。ありがたい。
ケチってうな重でなくうな丼にしたせいか相当美味しくないものがでてきた。

初日にお世話になった自転車屋さんに行ったがお客さんがつかえてて挨拶は諦めた。
さぁここからは平坦な1号を戻るだけだ!

疲労でやたらとふらふらした。
ちょっと気を抜くと左に倒れそうになったり。
それでも坂ではないだけ相当ましだ。
頑張っても時速20kmほどのスピードしか出ないが、歯を食いしばって漕ぎつづけた。

やっと横浜を越えた。
来る時は坂道がいやで綱島街道を避けたが、最期にここを避けると負けたような気がして結局入ってしまった。
辛いが何度も通った道。
半月前、久々にここをチャリで登った時、バイクに比べ「めんどくさいなぁ」と思ったがその時よりは坂道に慣れていた。

やがて日吉駅前の最期の坂道をくだり、18:30に自宅に着いた!
160kmですって!
自分でも今日は頑張ったと思った。
今日「頑張れ!」と声をかけられたら辛かったと思う。
荷物を解くのもめんどくさいがなんとかこなし、部屋に戻る。

部屋は片付けておいたので気持ちいい。
クーラーを点けシャワーを浴びて鏡を見る。
と、真っ黒な顔になってはいるが、目じりのしわの形だけ色が白い。
日中、苦しさとまぶしさでずっと顔をゆがめていたせいであろう。
こんなことは初めてであった。
しかし黒い。腕など「日焼け」というより「日焦げ」てな感じだ。
(ある人には「被爆」といわれた)

振り返ると初日二日目は苦しいながらも楽しかったが、三日目四日目は苦しさが辛かった。
やはり箱根天城を越えたい!という自分からでた欲求があった日と、義務感だけで走った日は同じ坂でも違った。
「できるだけ、自分がやりたいものを精一杯やろう」と、改めて思った。

終わって自分なりの勲章を得た!というよりは坂道などに負けずほっとした気持ちの方が強かった。
総距離もたいしたことは無かったが、自分程度の体力を考えるとそこそこ頑張れたと思う。
久々に自分とじっくり向き合う時間が取れてよかった。
改めていろいろな人に支えられていると思いました。

とにかく美しい自然を満喫できてよかった!
明日からは連日の飲み会。
頑張っていこう!


本日の走行距離 160.77km
TOTAL 473.90km

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