旅日記02

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1日目 2004年8月7日(土) 元住吉→箱根
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■出発

朝、4:00過ぎに起床。
前日「前祝い」と称して飲んだワインが残ってしまい、いまいち調子が上がらない。
うだうだ飯を食らうがどうも気合が入らないので、「小橋vs秋山」を見る。よ〜し、気合が入ってきた!!

昨日のうちに用意しておいた準備を改めて確認。サイドバッグ、テント、銀マット、そして河口湖マラソンでもらったバッグに着替えを入れる。
9ちゃんに積んでみる。おお!完璧!
その雄姿をデジカメに収め、いざ出発!

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今日の予定はずっと国道1号線を下り、小田原まで。
昼ごろまでについたら今日中に箱根を越えてしまおう!といった目論見であった。
いつもは坂道の多い綱島街道を通るのだが、頭っから坂道を登る気にはなれず、ちょっと遠回りしてとっととR1に乗る。環状一号線の辺りで迷ったが、なんとか盛り返し再度R1に乗る。

8:00
30キロ程走ったところ、戸塚駅の近くで自販を見つけ休憩。
座ってドリンクを摂取していると、膝の辺りに蟻が登ってきた。いつもはなんとも思わないが、坂に向かう自分に照らし合わせ心打たれた。
「おまえも頑張っているんだな」
と、思いつつも息で吹き飛ばしてみた。

その後も順調に飛ばす。
少しずつ日が照ってくる。今日は雲が多いのでギラギラの直射日光攻撃ではなかったが、じめっとしている。暑い。
コンビニでトイレを借りた時、もともと黒かった顔が赤く焼けている。さらに黒くなっちまうのか。
今回はメータをつけたので走行距離や時速がわかるのだが、ふと見ると止まっている。
こんなことにならないようにプロに付けてもらったっていうのに!
走行距離を測るというのも今回の目的でもあったのだ。
いろいろいじっていたらまた動くようになったが、どれぐらいかの距離が加算されていないってことだよなぁ。

平坦な道。海水浴客の車はうざいが順調に進む。小田原につく前に「今日中に箱根にいけるな」と確信。
格好が格好のためかいろんな人に声を掛けられる。
「どっから着たのぉ」はこの旅の最中なんども聞かれた。
いつもは「横浜です」と嘘をつくのだが(笑)今回は距離のこともあるので見栄を張らず「川崎です」と正直に答えていた。


■小田原

11:00
早くも小田原についてしまった。
何故か道路に警察官が多い。事故でもあったのかな。
このままの勢いで一気に箱根登ったるぞー!と気合を入れて加速すると、「ブカブカブカ」とタイヤに違和感。
なんと!後ろのタイヤがパンク……。
ひさっびさのパンクが旅の初日かよ! 一気にテンションが下がる。

パンクセットも予備のチューブも持っているけど折角街中なので自転車屋でやってもらおう。
聞くと二箇所あるという。
近いほうに行ってみると先ほどの警察官がいたところのまん前だ。

飛び込むとおばちゃんが飲み物をくれた。
「自転車の人がひき逃げされて犯人がつかまったんだって」
ひき逃げっすかー!事故だけは気をつけなきゃと改めて戒め。
「これからって時にパンクしちゃったんですよー」
「でも箱根いくならこの先自転車屋ないから、ここでやっといてよかったんじゃない」
なるほど。一理ある。

ご主人は白髪のおじいちゃんで「入る店間違ったかな」と思ったが、「感謝状」とかかれた東京オリンピック時の賞状があるのを見て、「もしかして凄い人なの?」と思い、いろいろ聞いてみた。
実はこの方の家系は、日本の自転車会ではいろいろ貢献された方らしく、自転車の輸入などにもかかわっていたらしい。
「横浜には自転車は輸入されたことはない、清水港が自転車輸入のメッカ」
「父は大正時代の日本代表」
などいろいろ教えてくれた。コーチの経験も長かったらしく、自転車の細かいところまで見てもらう。
「さっきも大宮からきたって2人組がいていろいろ教えてやったんだよ。京都に行くって言ってたよ」
サドルの角度や、坂道のコツなども聞く。
パンクしておいてよかったー。
自転車もリフレッシュしたところで、いざ箱根越えだ!

箱根町に入る手前のコンビニで弁当をガッチリ食べてる。
食べているとこれから進む旧1号に向かい折りたたみチャリに銀マット乗っけて、激しく駆け登っていく人がいた。
上には上がいるもんだ……。自分は自分の範囲で精一杯やるだけ。

12:30
いよいよ突入である。


■箱根旧道

しばらく温泉街が続き、山道に入る。
いよいよ本格的な坂道が始まった。
時速……6キロ!
最初の30分ぐらいは坂道も楽しんでいたが、だんだん体がきつくなってくる。

多分坂の角度はたいしたこと無いんだろうけど、距離が半端ではない。
いつもどおり「坂道の途中では休まない」を目標に頑張ってはいるが、やり切れたわけではなかった。

気が付くと苦しさに、上半身はうつぶせになるよう低く低くつっぷしている。
なぜこの格好になったのかはわからないが、こんな格好が1番マシだ。
「あぁ、、、あぁ、、、あぁ、、、あぁ、、、あぁ、、、」一漕ぎごとに声を出す。苦しくて顔を上げることができない。
下を向くと大量の汗がぼたぼた落ちてゆく。
「雨雲から地上を見下ろしたらこんな感じなんだろうなぁ」
苦しくなってきたら心の「小橋コール」である。
「あいつの日々の腕立て伏せの頑張りにくらべたらこんな程度の坂道などなんだ!こーばーし!こーばーし!」
まぁちょっとは効いたがやはり辛い。

時々チャリダーとであう。
2人組の男が坂の途中で休んでいた。さっきの自転車屋の客かな?
みな出会うと「こんちわー」と声を掛け合う。同じ苦痛を乗り越えようとしているもの同士、その一瞬やさしくなれるのだ。

しばらくすると小雨がぱらついてきた。
最悪である。天気予報で「晴れ時々曇り」ばかりだった上に、自分では脅威の晴れ男だと信じきっていたため全く雨の備えをしていなかった。
とりあえずデジカメだけ濡れないようにする。

気が付くとまたメータが止まってる!
散々だなぁもう。温泉(?)の出るローソンで休憩がてら直す。
直って良かったなぁ。


■疲労とブルー

14:30
うねっている上り坂の途中、右に下る道が見える。
「もうここ下っちゃおうかな」
疲れでとんでもない逃げ道を考え始めた。見渡すとちっちゃい旅館もいくつかある。
「もうここで今日は泊まっちゃおうかな」
だって本来なら小田原で一泊の予定だったしいいじゃん。
逃げ出したい時の言い訳は尽きない。

そんな時、ぱらついていた雨がシトシトと本格的になってきた。
疲労感が一気に襲う。「もう嫌だ……」
しばらくチャリを降りて地べたに座り空を見上げて休憩を取る。
雨が顔に落ちてくる。ぼけーっといろんなことを考えていたらふとこんな言葉を思い出す。
「もう駄目だ!からがホントの勝負!」
そうだ、ここからもうひと頑張りしてやる!
その瞬間、面白いように腹が決まった。
チャリに乗り込みペダルを元気に漕ぎ出す……とはいえ坂道なのでやはりあゆみは遅いが、それでも前向きにはなれた。

さらに自転車を漕ぎ進める。と、樹がうっそうと茂り雨で暗くなってくる。
腰が痛い。不自然に力をいれて漕ぎつづけているからだろうな。
坂道の辛さのみならず、腰の痛さゆえ時々止まってしまい背伸びをする。
地図をみても今現在どこにいるのか分からないため、不安になる。
そういえば車もあまり通らなくなってきた。
「道間違っていたりして」
「それともまだまだこれっぽっちしか進んで無かったりして」
そのたびに「い〜んや!大丈夫」と必死に不安を打ち消し続ける。

そのうち自分の体に思わぬ現象が起き始めた。
ちょっと力を入れたりひねった体の部分がつりそうになるのだ。
キャリアに積んだ荷物をいじるため後ろを向いたら脇がつりそうになったり、左手の人差し指がつりそうになったり。
筋トレとかしない自分は、胸筋がつりそうになったのは初めてだ。
肉体的にかなり疲れていたのかもしれない。


■制覇!

暗い、雨、坂道、疲労、不安。
家でドラクエやってればよかったなぁ。
などととにかく続けることだけを頑張っていると、ぽつんと立っている看板を見つけた。
「箱根散歩コース」なる地図じゃないか!現在地が記されている。
「ここまで来ていたんだ!!」
元気のランプに灯が灯った。
あぁ単純、実に単純な性格ではあるが、希望と明るさがあれば前向きになれるもんだ。

先が見えた光を糧に必死に必死に漕ぎつづけると、前方上空に青い看板が見えてきた。
[国道1号最高地点]と書いてある。
「キ、キターー!」
嬉しかった。
ケータイとデジカメに看板を撮って小雨の中しばらく満足感に漬かる。

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路肩にハルジオンが咲いていた。
そして……後は下りだ!

下り始めると、それまでうねっていた道がまっすぐな下りとなった。
急に日が差し始めて一直線の下り道が黄金色に輝いている。
「すげー、ドラマあるなぁ」などと思いながら下っていく。

16:00過ぎ
芦ノ湖に到着。
一応本日のノルマ達成!コンビニの位置を確認。
箱根神社にお参り。中国人の団体が50人ぐらいいる。
添乗員らしき男がけんか腰の声を張り上げていてうざい。
お賽銭を投げ、みんなの健康を祈る。

お参りをすませ、寝る場所を探す。最中、また雲が広がり小雨がぱらついて来た。
湖の周りというのは屋根がないもんだ。
1号をもうちょっと進むと道の駅があるはずなので、そこであったかいもんでも食ってそこでテント張ろう。
疲れた腿に鞭打って進んだが、また出たよ坂道。
「最高地点は越えたんだ」と高を括っていたが、またこれまでと同じような上り坂であった。
途中、「やすらぎの森」なる公園を発見。17:00でしまるらしいが、トイレがあり、トイレにテント半分程度の幅のひさしがある。
トイレを借りて再び道の駅を目指す。

えっちらおっちらしばらく進んでいると、ようやく道の駅にたどり着いた……が、既に閉まっているじゃねーの!
まだ5時過ぎだよ!
怒りと空腹でがっかり。もうここにテント張っちゃおうかと思ったが、さすがに腹が減りすぎているので芦ノ湖のコンビニまで戻って弁当を買う。

弁当、ビールを購入すると雨足が弱まってきたので、湖のほとりで食事。
食後、ゴミ袋と明日の朝ご飯を買って改めて道の駅に向かおうとしたところ……。
なんと突然豪雨となってしまった。怒られているような土砂降り。
「俺なんか悪いことしたっけ?」「頑張っている蟻を吹き飛ばした報いか?」
と思いながらもとりあえず道を登る。
道の駅はあきらめ、手前の「安らぎの森」公園へ向かう。午後5時をすぎ、入り口にはチェーンがかけられていたが、チャリならなんとか入れそうだ。
「非常事態につき御免なさい」
謝りながら必死で入園。トイレの横のちょっとしたスペースで慌ててテントを張る。
全身びしょびしょのぐっしょぐしょ。テントに入って体を拭き、狭い中で着替えをする。
ゴミ袋を二枚、テントの上に乗せる。これでも結局雨は防ぎきれなかったのだが。


■恐怖感と孤独感

夜。
雨はやまない。雷も長いことなっている。早く寝ちゃいたいのだがテントの上に雨が落ちる音や、テントの横から漏れてきた雨にすぐに目が覚める。
ぬれた体も寒く、長袖のTシャツを重ね着した。

となりのトイレには電気が無く、そのそばに寝ているのは気味が悪い。
ときどき、雨の音がパタッとしなくなったらトイレの壁から変な音がする。
「カサカサ。カサカサ」
毛が逆立つほどの恐怖を感じた。この音がやんだら、また雨の音が聞こえるようになるのである。
恥ずかしながら久々ホントに怖かった。
遠くから時々聞こえる車やバイクの音にかえって救われた。

恐怖と孤独感と寒さの1日目の終わりだった。

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本日の走行距離 104.54+αkm

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