旅日記02

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2日目 2004年8月8日(日) 箱根→下田
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■ブルーと青空

前日は雨と恐怖に見舞われたとともに、地面の腰の部分だけコンクリだか鉄だかとにかく固いものがあり、その痛みでほとんど眠れなかった。あれだけ疲れたしと思うと寝なきゃと焦ったが、焦るほどに眠気は遠のく。
ときにうつらうつらするが、ちょっとしたことですぐに目が覚めてしまう。
それでも気がつくと雨は止んでいるらしい。

朝4:00
もう諦めて起きることにした。テントの中で昨日買ったご飯を食べる。
全身がダルい。特に腿には鈍痛とも言える重さがある。
普段でない「目やに」がやたら付いている。

テントから出て空を見る。うっすらと明るくなってきて雲が見えるが……どう見ても雨雲だよなこれ。

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今にも雨が零れ落ちてきそうだ。
中まで雨の浸透したテントをたたみ、一応拭いてみるがまぁ効果はない。
気持ち悪いが濡れたまましまう。重い……。

出発の準備をしている間、また雨がパラついてきた。
「あ〜あ」
気分は最悪である。また昨日の土砂降りみたいになったらどうしよう。

ただ、「旅の最中はいいことと悪いことは交互にやってくる。旅のあいだで、絶対いい思いもできるはずだ」とは思っていたので、その時を待って今は耐えるときだと自分に言い聞かせた。
その時はすぐにやってきた。

とりあえず道の駅に向かって登りだす。
そりゃ覚悟はしていたが朝から坂道。ぽつぽつ落ちてくる雨。
誰かが路上に捨てていった漫画雑誌が濡れて車に潰されて汚い紙が道に広がっている。
滑りそうで怖い。こんなことで神経使わせないでくれ!

道の駅に到着。当然まだ開いていない。
裏に廻ると朝靄の中見下ろす山々が美しかった。
ふと見ると軒の下にテントが張られていてチャリンコもある。この人はここにテント張ったんだ。
軒はテントの幅より相当広い。俺もここに張ればよかった。
「昨日飯さえ持ってきていればあんな目にあわずにすんだのに」
ちょっと悔しい。

顔洗って歯を磨いて今日進むべき道を確認する。今日は天城を越えて下田まで行きたい。
少しずつ明るくなってきた濡れた空の下、まずは三島に向かい坂道を登り先を急ぐ。

どこまでも登りである。
この時間は車もほとんどないし、道路が広くて見通しもいいのだが、先に伸びる坂道を見ると滅入る。
だが進む以外に道はないので頑張って進む。

えっちら登っていたらまた道路がくねってきた。突然車が後ろからやってきてちょっとビビる。
路肩によけたら抜きザマに助手席の若ゾーがコブシ握って「がんばれよぅ!」と言ってくれた。
朝からそんな言葉を掛けられるとは。。嬉しくなって手を振る。
「よっしゃ、頑張るぞ!」ジーンとしながらまたペダルに体重を掛ける。

するとその車が見えなくなってすぐ、一瞬道が平らになった気がした。そう、まるでジェットコースターの最初の登りが終わった時のように。
キ、キ、キターー!!!
そこから先はその存在すら忘れていた、箱根の下り坂であった!

これが速い速い!
くねっているし道は濡れているのであまり無理は出来なかったが、慎重に降りても速い。
全く漕がずに時速55キロをマークした。

不意打ち的な喜びと漕がずに進む嬉しさと今朝のブルーさを乗り越えた、爆発的な喜びが押し寄せた。
「うおーーー!」
あまりの気持ちよさにボーっとする。
いけないいけない!集中しなおし箱根の下りの快感をかき集めるように感じようとした。
ゴゴゴゴゴーと耳元で風を切る音のなか、インコースを突くスリル、加速。

そのうち、山から下りてくると雨雲は無くなり、空が淡い水色になってきた。

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今日は雨ではない。嬉しすぎる。
絶対に旅のあいだにいいことはあると思ったが、こんなに早くしかも突然やってくるとは!

登りは3時間以上掛けて登ったが、下りは30分足らず、あっというまの快感であった。
ただその30分は下りの気持ちよさのみならずの精神的な様々な要因によって、最高の時間となった。


■修善寺

6:30
坂が終わり、平坦な田舎道に入る。
しばし漕ぎだす気にもなれず休憩。
目の前の直線に続く道の上に朝日が登っている。
写真に収め、さぁ再度出発である!

韮山では反射棟というのがあるそうで行ってみたが、まだ開場されていない。
この旅ではいつもそうである。出発が早いので、行ってみたいところが閉まっている場合が多いのだ。
食べ物なども結局腹が減る時は食堂など始まっていないのでコンビニ弁当が多くなる。
折角旅に来てるのに!

セミが鳴きだした。今日は暑くなりそうだ。
しばらく流していると「韮山鳴滝ビオトープ」なる場所があった。どうやら自然をのこしておこうという一角のようだ。
中に入るとちっちゃい青ガエルがいる!青ガエルなんて見たのいつ以来だろう。
しばらく写真をはしゃぎながら撮ってみた。

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さて南下を再開しよう。
しばらくすると大きな川にでた。狩野川だ!豊富な水量の雄大な川を見ると心が和む。
すでに鮎釣りしているひとが沢山いた。

南下を続けると、左手に修善寺に通じる県道12号線があった。
是非見てみたかったので左折。
ちなみに「しゅうぜんじ」だと思っていたことはトップシークレッツである。

修善寺にたどり着くとどうやら本堂は工事中らしい。がっかり。
ただ観光地図を見るといろいろ見所があるみたい。
この辺りは弘法大師や鎌倉幕府成立後の権力争いの名残が多く残っている。
807年に弘法大師が沸出したという伊豆最古の独鈷の湯という温泉や、源頼家の墓や指月殿、源義経像など見物。
昨日雨にたたられたり坂道ゆえあまりとれなかった写真もバッシバシshooootである。
古めかしい景色や建造物をみれて楽しかった。


■天城越え

136号まで引きかえし、再び南下を開始する。
さていよいよ天城越えだ。昨日の箱根に比べりゃたいしたことないべぇ。
途中、鮎の塩焼きを炭火で焼いているのを見つけた。
これがンマイ!店のおばちゃんと客のおっちゃんとしばらく雑談。
ビールを飲もうか本気で迷ったが、なんとかなんとか我慢した。

R414に入りじきに地味な坂道が始まった。
時速7〜8キロで進む。
10時を過ぎ、日差しが強烈になってきた。
直射日光が容赦なく照らしつける。
上半身は服を脱いだ。昨日はまだ涼しかっただけマシだったんだなぁと思い知らされる。
毛穴という毛穴が広がって汗が全身から吹き出てくる。
多い時には30分毎にペットボトルの飲み物を買っていた。

ただ立ち漕ぎのコツをちょっとつかんできた。
立ち漕ぎの場合はギアを下げすぎず、全身の力をこめても空回りしない程度の重さで保ったほうが楽なようだ。
それでも辛いものは辛い。昨日よりも角度が急な気がする。
苦しさと暑さと汗で顔をゆがめながらエッチラオッチラ進む。

10:50
浄蓮の滝に到着。
伊豆の踊り子の像の横にチャリを泊め記念撮影。

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急な階段を降りて滝を見に行く。
涼しくて気持ちがいい!「天城越え」の曲が石に彫られていたのは笑いました。
観光客は多かった。上半身裸なヤツはいなかったけど……。
ここでも鮎の塩焼きを売っていたが、ちょっと食欲なくわさびアイスも食べずじまいであった。

さらに南下する。というか南登!てところか。
いのしし村でしばし休憩。この辺りが1番きつかった。
道の駅で天城の道の歴史を読む。
箱根にしても天城にしても、昔の人は舗装もされていなかった道をどうやって登ったんだろう。
今回の旅では、ときどき「昔の人はどうやってここを……」などと考える機会が多かった。


■旧道

12:00
これまで進んできた新道から左折し、旧道天城路に入る。ここからは舗装されていないようだ。
ここまでの過程で相当疲れていたため、せめてこのまま舗装された新道のほうで行こうかなともよぎったが、当然自分の中の人は許してくれなかった。
休憩あいだ中ハチに追っかけられ、相当へこたれながらも気力を奮い立たせ登り始める。

「舗装されていない道」ということでかなり覚悟はしていたが、坂の角度自体はこれまでと変わらず、むしろ木々によって日差しがさえぎられ、しかもひんやりとした清らかな空気になって楽だった。
しかも道が美しい。
剥き出しのアスファルトとギラギラの光に照らされた今までの視界とは隔世の感である(←意味ちがう?)。
時々バイクだの車が追い越していくが、心に余裕をもって避けてあげることができる。

30分ほど登ると旧道トンネルにたどり着いた。
トイレの前にバイクがある。さっき追い抜いて行ったバイクだ。
テントと銀マットを積んでいる。この人も旅してるんだなぁ。いいなぁバイク。

トンネルのまえで写真を撮っているとバイクの人がトイレから戻ってきた。
「こんにちわ」と声を掛けられた。
若いお兄さんだった。社会人一年目らしい。
「学生さんですか?」確かに半そで短パンで幼いカッコはしているが……学生はねぇだろ!
「ここまでのぼってきたんですかぁ!?」と驚いていた。
これから名古屋まで行くそうだ。
自転車でも去年四国一周したらしい。
しばらくバイクの話で盛り上がる。

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お互いに写真を取り合って「気をつけて!」と別れた。
トンネルはひんやりとして気持ちイイが電気が弱すぎ!
怖くなって駆け抜ける。

バイクの彼が追い抜いていって、また一人になった。
感じのいい人と話をして気分転換できた。
「さぁ来いやぁ(高田風)、登り坂め〜」
と、おもったら……。

トンネルを越えたらそこは下り坂だった!!
またもや不意打ち。天城のてっぺんはあのトンネルだったのね!
道路も舗装され、新道と合流。路肩も広いので思い切って加速する。
出ましたレコード時速59`!

七滝ループ橋というのが先にあるようだ。
「抜けないとずっとループして周っている道?」とおもったが、らせん状になっている橋という意味らしい。
横から見ると確かに上下に道が並んでいる。

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プログラマ的発想の自分に苦笑いした。

やがて坂道も終わり、さらに南に進む。かなり疲れた。
どれだけ進んだか前方の上空を見上げると……何も無い!広い青空だけが広がっている。
「キ、キター!」
ついに海までたどり着いたのだ!
浜で海を見渡すと一気に視野が広がる感じ。
海水浴の客でにぎわってる。

河津までたどりついたということは、下田は隣町。すぐである。
さぁーとっとと行って温泉入って上手いもん食って飲んで……やっと休める!
海を左手に下田へと急ぐ。


■下田

……ところが坂が出てきた。
あれ?なんでまた?
話には聞いていたが、伊豆というのは山と山の間に街があるらしい。
なので街から街に移動する時は山を1つ越えなくてはならないのだ。

ここに来て結構な坂である。快晴の崖沿いなので景色はいいのだが、疲労感から日光が辛い。
これ明日から西伊豆を進むのに、大丈夫なのか?と少々不安になるが、とりあえず進む。
30分ほどの登りを経て、下田に入った。

15:00
当然下り坂。やっぱり気持ちがいい!

海岸沿いをすすみテントを張れそうな場所を探す。
するとここにも道の駅があった。
「テントここでいいや」即決である。次は温泉だ!昨日は風呂に入れなかった。
体はスーっとする「男の」殺菌ペーパーみたいので拭いていたのだが、やはり気分が悪い。
すぐに観光案内に行き、立ち寄りで入れる温泉を教えてもらった。
そのなかの1つのホテルに行き、1000円払って入る。
1000円はちょっと高いと思ったが、とにかくとっとと風呂に入りたかったのでここに決めた。

結果的に1000円は決して高くなかった。
なんと大浴場には客がいなくて貸切状態だったのだ。
奥の壁全体のガラスには下田の美しい海が一杯に見える。
それをみながら一人で広い温泉……。最高である。
立って外を眺めながらフッと思った。「外から見えてないだろうなぁ」
まあ見られたっていいや、気持ち良いし。

露天の風呂もあり、何度か往復。
全身をガッチリ洗ってさっぱり、上がって休んでいると何組かの客がどかどか入ってきた。
タイミングよかったぁあ。

もう汗はかかないようにゆっくり道の駅に戻ると、観光案内から外人が2人出てきた。
アメリカ人の2人組みで、片方はちっちゃいがやんちゃそうで、もう片方がガタイはいいがおとなしそうだ。
見るとチャリに銀マットのみ積んでいる。
「ハーイ」と声を掛けてみた。
彼らは湘南から来て、明日フェリーに乗るそうだ。
ほとんど日本語が出来ないみたい。
「どこかに泊まるの?」と聞くと山を指差し「あの辺りのforest(森林)で寝るつもりだ」とのこと。
「りぁりぃ〜〜!!??」
自分はこの辺にテント張るつもりだよ、この辺は大丈夫だよと教えてあげた。
温泉を進めたが、「熱いお湯は嫌い」とのこと。
ご飯はどうするのか聞くと、「Unnn〜 You know 〜 KATSUDON?(カツ丼しってる?)」
カツ丼が大好きらしい。もちろんガタイがいいほうのお言葉である。

まぁどこも見つけられなかったらここにおいでよと話し、とりあえず「See you」で別れた。

さぁ、海の幸タイムである。
いろいろ見て廻ったが、ちょっと高そうな店で金目鯛の煮付け定食を食べた。
下田というのは金目鯛の水揚げが日本一らしい。
これがとろけるように美味かった!
ビールも二杯飲む。疲れのせいか、2杯でも相当まわった。

昨日寝付けなかったことを思い出し、さらにアルコールを買って道の駅へ。
日記を書きながら辺りのお店が閉まるのを待ってテントを張った。

目の前の蛍光灯を頼りに日記の続きを書く。
するとこの蛍光灯にセミが停まった。
泣き声を聞くとツクツクボーシだ。ソロで歌いまくってる。
最初は生態観察しているようで楽しかったが、もう寝る時には追っ払った。

目の前は海ということで星も綺麗だった。
トイレで洗濯もして、さぁねるぞ!
ところがテントを張ったのが建物の陰とはいえ駐車場のそばでトイレへ通じる道の途中で会ったため、車の音と人の近づく音でこれまたなかなか寝付けない。
チキンである。まさにチキン。
アルコールを流し込み、強引に目をつぶった。


本日の走行距離 109.29km
TOTAL 213.83km

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